12/18/2009

[SCMP記事他]BVI法人の香港証券取引所上場が可能に(4)

"BVI companies can now apply to list in Hong Kong" (South China Morning Post紙2009年12月17日付記事)

日本の証券市場を活性化させるには、証券取引所が単独で施策を検討・実行するのではなく、政府、経済界が一体となって、考えなければならないことであろう。このような観点で最近がっかりしたニュースとしては、社外取締役設置の義務化の見送り(日経2009年5月26日付け記事「経産省、社外取締役設置義務化を見送り 経営監視策求める」)があげられる。

東証は最近、希薄化が大きい第三者割当を規制したが(大和総研記事「東証の第三者割当規制」)、こういった形で、形式的に縛れば縛るほど、その形式に則って少数株主をないがしろにするような行為が行われたりするわけで、結果として投資家は離れて行き、市場としての活力がそがれてしまうことになるのではないか。

希薄化が大きく進むような増資をやったとしても、それで調達した資金で獲得した資産が、既存のビジネスよりも収益性が高ければ、株価が結果として上昇し、少数株主の利益が損なわれない、ということも考えられ、こういう外形的な規制は市場の柔軟性も失わせてしまうように思われる。

希薄化によって少数株主の利益が損なわれるようなことをした時に、社外取締役の責任を徹底的に追及する、という仕組みの方がより効果的に少数株主の利益をそのなうような増資の規制ができると思うのは、短絡的だろうか。(完)

[SCMP記事他]BVI法人の香港証券取引所上場が可能に(3)

"BVI companies can now apply to list in Hong Kong" (South China Morning Post紙2009年12月17日付記事)

このような施策を仮に実施できたとしても、やっと香港、シンガポールに追いつくだけであるから、何か東証らしいウマミが無いと、外国企業は敢えて上場をしたいと思わないであろう。(一部は東証AIM市場で実現できていると思われる。)

希合は、やはりここは日本の莫大な金融資産を基礎にした、市場の本当の意味での実力を背景にしたメリット(流動性、バリュエーションその他)を生み出す必要があると考える。

例えば、日本はベンチャー企業の支援体制が整っていて、かつ投資家もベンチャーに理解があり、高いバリュエーションが実現可能、といった評判を打ち立てられれば、さまざま企業が日本の証券市場に集まり、投資家も集まってくる、という好循環が生まれ、魅力的な市場になるであろう。(今の香港市場がそういう状況にある。)

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[SCMP記事他]BVI法人の香港証券取引所上場が可能に(2)

"BVI companies can now apply to list in Hong Kong" (South China Morning Post紙2009年12月17日付記事)

これと対照的な動きをしているのが、、、、東京証券取引所。外国企業の上場社数は、1991年の127社をピークに減りに減って、現在はなんと15社のみ(東証の外国企業上場社数推移)。東証は市場の流動性があり、それなりに存在感のある市場といえるが、このままでは、日本の証券市場は、ますます地盤沈下が進むであろう。最近では外国企業のみならず、日本企業そのものも日本の証券市場を見放してしまっているように見受けられる。(日経新聞2009年12月17日付記事「09年の上場廃止企業数、戦後最多の163社 帝国データ調べ」

今後、上場企業を増やし、日本の証券市場の地盤沈下を防ぐには何をしたらよいのか?希合の考えとしては、
①審査プロセスの徹底した透明化(暗黙のルールの排除)、
②審査のスピードアップ、
③英語での審査書類を受け付けて、英語での審査対応もできるようにすること。(ただし目論見書は日本語である必要があるであろう)、
④上場審査そのものや、上場審査基準の策定プロセスに現状以上に弁護士・会計士、その他専門家をより積極的に関与させていくこと(現状は証券会社側、証券取引所が審査の主体となっているが、結果として一部の基準が大手証券会社の中でブラックボックス化されてしまっている可能性はないか?)等が考えられるであろう。

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[SCMP記事他]BVI法人の香港証券取引所上場が可能に(1)

"BVI companies can now apply to list in Hong Kong" (South China Morning Post紙2009年12月17日付記事)

香港証券取引所に上場できる企業の国籍については、これまで香港、ケイマン、バミューダ、中国等9カ国・地域(香港証券取引所が認める上場申請受付可能な企業の国籍リスト)であったが、イギリス領バージン諸島(British Virgin Island、略称BVI)が上場可能な企業の国籍の10番目として加わった。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)の記事によると、今回の決定は、BVI法人である中国企業(性格には中国で事業展開をするBVI法人の企業)のロビーイングがあったことが背景にあるとしている。

昨年1年間で、ケイマン法人の設立数が約14,000社、バミューダ法人が約1,200社に対して、BVI法人の設立数はなんと65,000社もあったという。BVIの会社の設立及び維持費用がケイマン法人と比べて小さい、ということもあるとのことだ。

香港では、これまでは原則として香港、ケイマン、バミューダ、中国の企業の上場しか認められていなかったが、今後はこれを拡大する方針をとっている。最近でもロシアの企業のRusal(こちらもケイマン法人か何かであろう)の上場も控えており(Rusal IPO関連記事)、今後中国企業以外にも中央アジア等の企業の上場を誘致したいという思惑があるようだ。

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12/16/2009

中国の発電電力量(3)

月次の増減(中国の発電電力量p.3参照)を見てみると、リーマンショックが昨年の9月で、10月から発電電力量はマイナスで推移しており、自分が政府当局の担当者であれば末恐ろしくなる。

中国政府政府は昨年11月に4兆人民元の景気対策を発表し、さらには5月にはそれを上積みするといった発言(2009年5月11日付ロイター記事)まででているが、発電電力量の数字とあわせてみると、一連の中国政府当局の危機感が感じられる。

それにしても、日本の電力量の伸び量の伸びのふがいなさ、、、。(完)

中国のGDPについて詳しく知りたければ、以下の書籍をどうぞ。

中国の発電電力量(2)

米国、EU27カ国、日本、中国の1998年からの発電電力量の統計を並べてみると、もっとたまげてしまった。

米国、EU27カ国、日本、中国の発電電力量希合投資ウェブサイト

中国の発電電力量は1998年には日本と同じ規模であったのが、この10年間で日本をあっという間に抜き去り、今はEU27カ国に迫る勢い(今年は追い抜いたか?)である。

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中国の発電電力量(1)

中国のGDP数値は、各省の数値を足しあげると、中国政府が発表している中国全体のGDPの数値を上回る、というおかしな状況がここ5、6年続いているそうだ(Market Watch記事)。中国のGDPの数字はおかしい、とよく言われる所以である。

中国経済を分析するエコノミストは輸出入の統計や電力発電量の統計を参考にしながら、実際の中国の経済状況について分析をするそうだ。電力の発電量は、各省が中央に報告する数値とは異なり、なかなかウソのつけない統計だから、ということのようである。

12月11日に11月の中国国家統計局から11月の月次の経済指標の発表とあわせて、発電電力量が発表された。

11月份国民经济主要指标数据(中国国家統計局)

11月の中国電力生産量は前年比+26.9%、4年ぶりの高い伸び=国家統計局(ロイター)

前年同期比で27%の伸びと聞いてたまげてしまった。これは本当なのか?という思いで、果たして、中国の発電量は欧米と比べてどれくらいの規模になっているのか、ちょっと調べてみた。

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12/06/2009

香港ドルとホットマネー流入?(4)

今、世界経済の頼みの綱は中国、と言われているだけでに、中国企業が多く上場する香港市場、あるいは中国経済の成長の恩恵を受ける香港に投資をしたいという世界の企業や投資家が、交換が自由にできない人民元ではなく、香港ドルに集中しているのかもしれない。

もし、それが真実であるとすると、昨今の金融危機を受け、米国連銀が金利を極端に低下させ、米ドルを大量に刷り、米国政府も景気対策として財政支出を拡大する中、大量に出回った米ドルは最終的にHKMAが買い、香港が香港ドルであふれる、という構図になっていることになる。

ここ1年の香港のハンセン指数の上昇ぶり、マンションの価格の高騰の背景がこのような資金の流入であるとすると、1987年のブラックマンデーの後に日銀が金融緩和を続けた結果、株式市場は1988年からブラックマンデーの1989年を頂点とするバブルの崩壊を招いたことを髣髴とさせ、現在の中国市場、香港市場を、若干冷静な目で見つめる必要があると考えさせられる。(完)

香港ドルとホットマネー流入?(3)

一方、香港ドル金利のほうはどのように変化しているか見てみると、国債に相当するExchange Fund Bills及びNotesの利回りは以下のように推移している。

2007年12月末 1.96%(91日) 2.55%(364日) 3.44%(10年)
2008年12月末 0.05%(91日) 0.25%(364日) 1.19%(10年)
2009年11月末 0.04%(91日) 0.11%(364日) 2.08%(10年)
(Exchange Fund Bills及びNotesの金利はここを参照)

確かに短期金利は下がってきているものの、逆に長期金利は上昇に転じている。短期金利がここまで低下してしまうと、これ以上下げようもないし、米ドルも超低金利下にあることから、香港ドル買いの圧力を低減する効果は殆どないのであろう。

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香港ドルとホットマネー流入?(2)

HKMAによる米ドル買い、香港ドル売り介入は、市中の銀行とHKMAが決済に使用する口座(Aggregate Balance of the banking system、以下"Aggregate Balance")を通じて行われ、HKMAが香港ドルを売った分、このAggregate Balanceが増加することになる。

Aggregate Balanceは日々公表されており、最近はこの額が増加する度に、香港では「熱銭(ホットマネー)」が流入!と騒がれるようである。(HKMA Interbank Liquidity

事実、Aggregate Balanceは、2007年末には10,639百万香港ドル(約1,300億円)に過ぎなかったのに対し、2008年12月末には158,038百万香港ドル(約1兆9千億円)と15倍に増加(HKMA Annual Report 2008 p.49 )、そして先週の12月3日(金)現在では、なんと、302,956百万香港ドル(約3兆6千億円)にまで拡大している。

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香港ドルとホットマネー流入?(1)

ここのところ、中国、インドといった新興市場への投機マネーの流入がこれらの国の資産価格のバブルをもたらしている、との報道が盛んだ。

中国、インドに投機資金流入 株式・不動産が急騰、バブル懸念も(12月6日 NIKKEI NET)

Worried nations try to cool hot money(11月19日 Financial Times)

香港でも中央銀行に相当する香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority, 以下HKMA)が、香港ドルを売り、米ドルを買って、香港ドルと米ドルの為替レートを固定させている。日本では為替介入は政府の判断により、財務省に委託して実行するが、香港では1米ドルに対し7.75~7.8香港ドルを維持するよう、HKMAによる為替介入が義務化されている。

本来は、HKMAが米ドルを買い香港ドルを買う
⇒香港ドルの市場への供給が増加
⇒香港ドルの金利が低下
⇒香港ドル買いの圧力が減少
するという仕組みである。(参考:HKMAのCurrency Board system

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